2012年はスマートフォン(以下、スマホ)の普及が加速した1年だっ

 2012年はスマートフォン(以下、スマホ)の普及が加速した1年だった各社が発表する新機種の大半はスマホとなり、販売店でもスマホの展示が売場の多くを占めるようになったAndroidスマホが登場し始めた2009年〜2011年は、「あのメーカーがスマホを出した」「スマホおサイフケータイを使えるようになった」「全部入りのスマホがついに登場した」など、スマホの新機種が発表されるたびに注目を集めてきたソニーモバイル(当時はソニー・エリクソン)の「Xperia SO-01B」、シャープの「IS01」「IS03」、NECカシオの「MEDIAS N-04C」、富士通の初代ARROWSなどが良い例だろう

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 しかし2012年はおサイフ、ワンセグ、防水など日本で支持される機能を多くのモデルが備え、ディスプレイやCPUなどのスペックも横一線になりつつある各メーカーが2号機、3号機を開発するにつれてスマホの性能もこなれてきた一方で、機種ごとの新鮮味が薄れつつあるようにも感じるフルタッチ型のスマホフィーチャーフォンに比べてギミックがシンプルなので、デザインや形状も似たり寄ったりになりがちだ仕事柄、多くのスマホに触れる筆者でさえ、正面から見るとどれがどの機種か分からないことはよくあるこれだけスマホが増えた今、キャリアやメーカーにとっても、それぞれの機種でどのように差別化を図っていくかは悩ましい問題だろうそんな中で、2012年に筆者が特に注目したモデルをピックアップした

●開発者の愛情が尋常じゃなかった「L-06D JOJO

 何はともあれ挙げたいのが“ジョジョスマホ”こと「L-06D JOJO」(LGエレクトロニクス製)だ2012年はジョジョスマホなしで語ることはできないィィィィィ! と思えるほど印象に残った1台だったなぜ「ニューススマートフォン・オブ・ザ・イヤー2012」のノミネート機に選ばれなかったのか不思議でならないジョジョファンの筆者が単純に「ドコモがジョジョスマホを出すとはよぉ〜っ『まさか』って感じだがグッときたぜ!!」と感動したのももちろんあるが、開発陣の熱意と愛情をここまで感じられた携帯電話を今まで見たことがなかったからだそれもそのはず、ジョジョスマホは生粋のジョジョラーや、ジョジョ好きが高じて他部署からプロジェクトに参加した人たちが開発に携わっていたのだ

 まず、コンテンツへのこだわりが尋常ではない背面に描き下ろされた徐倫やオリジナルの壁紙はもちろん、アプリのアイコン変更、ウィジェット、名台詞の予測変換、ジョジョ絵文字、JOJOカメラ、F-MEGA、JOJOプレイヤー、細かいところではピクトアイコン、通知バーの背景、文字入力の決定キー……など、隅から隅までジョジョの世界で埋め尽くされているコラボスマホというと、デザインが特徴的なイメージがあるが、ジョジョスマホはあえてデザインはシンプルにまとめ、コンテンツで勝負したしかも、ちょっと使っただけでは発見できないような細かい設定もある例えば、ジョジョスマホではアプリのアイコンもジョジョの好きな画像に変更でき、アイコン画像はジョジョのきせかえテーマごとに用意されているが、きせかえテーマを替えなくても、異なるテーマのアイコンを選べるまた、これは最近まで知らなかったのだが、ロック解除画面のテーマも変更できるさらに……とこれ以上書き出すとキリがないのでやめておくが、とにかくほかのスマホにはない「スゴ味」がある! のだ

 個人的に一番気に入った機能が、スタンドのイラストや擬音などを写真に合成できる「ジョジョカメラ」ジョジョスマホ自体を飲み会などで周りに見せると驚かれるが、このジョジョカメラを披露するとさらに面白がられるジョジョスマホはちょっとした盛り上げツールとしても活躍した

 開発者たちの自己満足に終わらず、荒木飛呂彦先生のエッセンスがしっかり注入されているのもファンには嬉しいポイントだ荒木先生の意向により、ボディカラーが急きょブラックからホワイトに変更されたり、背面の徐倫イラストの向きは当初真っ直ぐだったが斜めに直したりと、開発者の想定を超えた部分もあったようだが、出来上がった製品を見ると「『納得』は全てに優先するぜッ!!」となるのだ

 1万5000台限定という数も物議を醸したジョジョスマホの予約開始前日や深夜から並ぶ人たちが続出し、即日完売状態となるなど、携帯業界に瞬間風速的なブームを巻き起こした(と勝手に思っている)予約開始日の8月16日は、ジョジョスマホを求めて多くの人たちが街中をさまよったかく言う筆者もその1人で、某ドコモショップで8人中8人の枠に滑り込めたときの安堵感は今でも忘れられない5万台限定のワンピーススマホがやや静かな船出になったことを考えると、ジョジョスマホの台数は少なすぎたのではないかと思うが、逆に考えるんだ……少ないからこそ価値があるんだ……とも思える

 惜しむらくは、機能・サービスが全部入りでありながら、スマホとしての性能がやや貧弱貧弱ゥ!だったことまず、画面サイズが大きいこともあってか、バッテリーの持ちが悪く、バッテリー残量に応じて絵柄が変わる「レッド・ホット・チリ・ペッパー」のウィジェットでは、チリ・ペッパーが瀕死になっていることが多かったチップセットが当時最新だった「Snapdragon S4 MSM8960」ではなく、1世代前の「APQ8060」だったのも惜しいジョジョカメラで写真を加工する際に「世界(ザ・ワールド)」の攻撃に遭ったかのごとく動きが数秒止まる、ホーム画面に戻ったときの動作がややもたつくなど、「MSM8960だったら、あるいはOptimus Gがベース機だったらどうだったかなぁ」と思うことはしばしばあった

 ともあれ、コラボスマホとしての完成度は非常に高く満足しているジョジョスマホの取材も当初の時間をオーバーするなど(スイませェん…)話が尽きることはなく、インタビュー記事は「まだやるのか」と周りに言われつつも全5部の長編になった(できれば8部までやりたかったのだが……)開発に否定的だった役員を説得して企画にこぎ着けた開発陣、限られたスケジュールで満足いくモデルに仕上げたLGエレクトロニクスには敬意を表したい

 ビジネス的な視点で見ると、ジョジョスマートフォンとコラボする素材として最適だったのではないかと思う単行本の部数は「ONE PIECE」などの国民的作品に比べると少ないが、ジョジョは関連グッズを買うためなら出費を惜しまないディープなファンが多い「ジョジョ展」のチケットが早々に完売したことからもうかがえるジョジョをリアルタイムで読んできた30代にスマホユーザーが多いことも追い風になったはずだジョジョスマホは、コラボモデルの成功事例と言って間違いないだろうし、開発に否定的だったドコモの上層部が今どう思っているのかは気になる

 そして、L-06D JOJOがあれだけヒットしたのだから、ヱヴァスマホのように第2弾も……と期待せずにはいられない個人的に、次があるなら「ジョジョタブレット」の登場を望みたい5インチ、4:3の画面比率であるOptimus VuをL-06D JOJOのベース機にしたのは正解だと思っている画面が大きいので壁紙を堪能できるし、コミックも読みやすいこれがさらに大画面のタブレットになったら……と考えただけで「ハッピーうれピーよろピくねー」となるわけだ筆者の場合、ジョジョスマホをデスクに置いて、画面を常時点灯させてフォトフレームのように壁紙を表示させていたので、次期モデルのディスプレイにはぜひIGZOを……だったら開発メーカーは!?……と、妄想が留まりそうにないのでこのへんにしておきます

 ジョジョのスタンド(各人が持つ守護霊のようなものそれぞれで能力が異なる)のパワーは、スタンド使いの精神力に左右されると言われているが、コラボモデルも、開発者の精神力=愛情が具現化されるのだと感じた安易なコラボモデルは失敗する可能性が高いが、ジョジョスマホのような愛情の詰まった、そしてヒットする土壌の整ったコラボモデルは今後も歓迎したい

●デザインと質感が秀逸だった「Xperia NX SO-02D」

 続いて印象に残ったのが、ドコモの「Xperia NX SO-02D」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)だ似たようなデザインのスマホが発売されていく中、透明素材「Floating Prism」を用いたXperia NXのデザインは非常に斬新で、Floating Prismの中を優しく照らすLEDも美しかった

 ソニーモバイルは毎年デザインコンセプトを変えており、2012年は「アイコニックアイデンティティ」をコンセプトにしているカタカナだと分かりにくいが、一目見てソニーモバイルの製品と分かるデザインのことだXperia NXの透明素材は派生モデルを除いてほかの機種では見られず、まさにアイデンティティのあるデザインと言える透明素材自体に何か機能があるわけでもないし、「透明にしたから何なんだ」という声もあるだろうそれでも、一目見て「おっ!」と思わせる何かがあるのは、個人的にはとても重要だと思うアンテナを透明に見えるようにするなど技術的な難易度も高く、「他社がまったく同じことをやろうとしたら、2年かかる」――と、取材中に開発陣が生き生きと話していたのが印象的だった

 Xperia NXでもう1つ際立っていたのは“質感”だスマホの質感はマットかグロスがほとんどXperia NXのWhiteの質感は、どちらかというとマットなものだが、ほかの機種でよく触れるマットとはまたひと味違うマットなのに、ツルツル、すべすべ、なめらか――言葉にするのが難しいが、直感的に思い浮かんだのがこんな感想だ開発陣の「彫刻のような美しいたたずまいを見せたかった」という言葉が特に印象に残っており、スマートフォンは、ある種の“作品”であるとも思えてくる

 汚れの付きにくい特殊な塗装を施しているのも特筆すべき点だWhiteなので汚れが目立ちやすいが、Xperia NXでは、指でさっとこするだけでたいていの汚れは落ちてしまうスマホは長く使うだけあり、キレイに保てるのは嬉しいまた素材や塗装が安っぽいと、使うモチベーションが下がってしまうが、質感に惚れ込んだXperia NXは、意味もなく握ったり手をスベスベさせたりしていた(端から見ると危ない人に見られそうだが)こういうカタログやスペックで図れないところが、ますます重要になってくるのではないかと思う

 このように、Xperia NXは見た目と質感が秀逸なモデルだったソニーモバイルは2012年半ばから後半にかけて、「Xperia GX SO-04D」や「Xperia AX SO-01E」など、Xperia arcのアークフォルムを継承させたモデルを多く投入した持ち心地はNXよりもGXやAXの方が優れていると感じるが、正直なところ新鮮味は薄かったNXはLTEFeliCaに対応しないなど機能は物足りないが、ベスト・オブ・デザインを選ぶなら断然NXだ2013年はさらに新しいデザインテーマを打ち出してくると思うが、arcやNXのような「おお!」と思える新機軸を期待したい

●「IGZO」がバッテリー問題の救世主に?――「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」

 “新技術”で差別化を図ったのがドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」(シャープ製)だ何といっても「IGZO」を搭載したことが大きいバックライトの透過率が向上して表示が明るくなるだけでなく、静止画表示中の画像更新を従来の60分の1に抑えて、省エネ性能が向上している筆者はSH-02Eをじっくり使っていないので、実際のところはまだ何とも言えないが、「確かにバッテリーが持つ」という声はよく聞かれる複数のモデルで静止画を表示させ続けたところ、SH-02Eが断トツで持ったという調査結果も見られた(今後レビュー記事であらためて検証する予定)

 スマホのバッテリー問題は一朝一夕に解決できるものではない物理的に大容量のバッテリーを搭載する方法もあるが、端末サイズが大きくなってしまうのがデメリットだし、ソフトウェアやネットワーク側で制御するにも限界があるIGZOを搭載したSH-02Eは、そんなバッテリー問題を解決するエポックメイキングな製品と言っても大げさではないだろう静止画表示中の消費電力を抑える……と言われてもピンと来ないかもしれないが、要は画面の表示内容がまったく動いていないときスマホをアクティブに使っていると効果は薄そうに思えるが、一瞬でも画面が止まると更新回数が60分の1に減るので、例えばWebサイトを閲覧しているとき、スクロールをちょっと止めたときなどで小刻みに更新を減らし、それが積み重なると、かなりの省電力を期待できそうだ

●“ひと目惚れ”の名をほしいままにした「HTC J butterfly HTL21」

 「ひとめ惚れの予感です気持ちよすぎるHTC」というキャッチコピーでおなじみの「HTC J butterfly HTL21」発表直後から多くの注目を集め、12月9日発売ながら、「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2012」では「iPhone 5」など並み居る強豪を抑えて1位に輝いた筆者はKDDIの発表会場で実物を見る前、紙資料でスペックを見た時点ですでにひと目惚れしてしまい、冬モデルで買うならこれだと即決した

 もちろんスペックだけではないKDDIの田中社長は発表会でこのキャッチコピーに触れ、「あまりよく分からないけど……(笑)」と話して会場を笑わせていたが、あらためて考えると、非常に的を射たコピーだと思うディスプレイ面にラウンドのかかったボディはフルHD液晶と相まって美しく、板のように薄いので持ち心地も良いXperia NXでも触れたが、この「わけもなく触ってみたくなる」ボディが製品への愛着につながるのだ動作やバッテリーの持ちも安定しており、使っていても“気持ちいい”長く愛用できるモデルになりそうだ

 スペック面でのトピックはフルHDディスプレイだが、ブラウジングSNSを利用する分にはあまり恩恵は感じないテキストの見やすさはパッと見だとHD液晶と大差なく、ブラウジングSNSだけならHD液晶でも十分だと思う一方、写真を見ると違いは明らか料理の写真などは実物が飛び出してくるように見えるカメラを活用するモチベーションも上がりそうだ2013年にはフルHDディスプレイ搭載機はさらに増えることが予想されるが、HTC J butterflyではいち早く最新のスペックを取り入れ、デザイン・機能を含めてトータルで完成度の高いモデルに仕上げたことを評価したい

 スペックでの差別化が難しくなりつつある今、スペックだけでは図れない「+α」がますます重要になってくるジョジョスマホの“コラボ”、Xperia NXの“新機軸のデザイン”、SH-02Eの“IGZO技術”、HTC J butterflyの“持ち心地”は、この+αを具現化したものと言える2013年は、どんな+αを見せてくれるのか、楽しみにしたいソニーモバイル(当時はソニー・エリクソン)の「Xperia SO-01B」、シャープの「IS01」「IS03」、NECカシオの「MEDIAS N-04C」、富士通の初代ARROWSなどが良い例だろうメンズ 腕時計ソニーモバイル(当時はソニー・エリクソン)の「Xperia SO-01B」、シャープの「IS01」「IS03」、NECカシオの「MEDIAS N-04C」、富士通の初代ARROWSなどが良い例だろうブルガリ 腕時計ソニーモバイル(当時はソニー・エリクソン)の「Xperia SO-01B」、シャープの「IS01」「IS03」、NECカシオの「MEDIAS N-04C」、富士通の初代ARROWSなどが良い例だろう時計 レディース